アテナ(Athena)作品情報
監督:ロマン・ガブラス
キャスト:ダリ・ベンサーラ/サミ・スリマン/アントニー・バジョン/オウアシニ・エンバレク/アレクシス・マネンティ
アテナ(Athena)のかんたんなあらすじ
舞台はフランスのアテナ団地。
警察官に暴行を受け少年が死亡した事件をきっかけに暴動が起きる。
アテナ(Athena)のネタバレなし感想
アテナは1時間37分の作品なんだけど、あっという間に1時間37分が過ぎ去る。
冒頭の暴徒と化したアテナ団地住人が警察署に武器を強奪しに行くシーンを見てしまったら最後までジェットコースターに乗ったようにアテナの世界に引き込まれる。
臨場感と迫力が半端ない映像はなんとワンカット。
どうやって撮影してるのかはわからないけど、凄まじい映像技術なのはわかる。
まるで本当に暴動が起きているとしか思えない。
混沌とした暴動を描きながらも、計算され尽くしたタイミングや花火の色使い、音楽でアートのようにも感じられる美しい映像描写。
冒頭で引き込まれたワンカットだけでなく、今作ではワンカットを多用して臨場感を維持しているのがすごい。
映像としての満足度が高かったのはもちろんだけど、ストーリーもなかなかシリアスでヒリヒリする。
アテナ団地と敵対する警察官という構図は、権力や格差社会をわかりやすく表現している。
アテナ(Athena)のネタバレあり感想
とある兄弟を中心にストーリーが展開していくわけだけど、弟の仇を打ちたくて暴徒のリーダーになるカリムの気持ちもやるせないし、その兄であるアブデルもさらにやるせない。
貧しい環境でも負けずに家族を助けようと軍人になったにもかかわらず、その正義感の強さが報われず結果的に弟を2人も失ってしまう。
これはたまらんよ。
自分のことしか考えていない父違いの長男に「お前に何がわかる」と言わんばかりの鉄拳が止まらないシーンで怒りとやるせなさが痛いほど伝わる。
そこからのもう引き返せない覚悟がぞくっとさせると同時に、さらに映画に引き込まれた。
セバスチャンは何者だったのか
それにしても、隠しボスっぽい雰囲気のセバスチャンは過去に何をしでかして住人に隔離されてたんだろうか。
ラストシーンから想像するに元爆弾魔とかかな。多くは語られていないけど、ヤバい人感は上手く表現できてるなぁ。
アテナ(Athena)の犯人は誰なのか
警察官に暴行を受け少年が死亡した事件をきっかけに暴動が起きたわけだけど、結局誰が少年に暴行を加えたのか?
ストーリーが展開していくなかで、警察側はやってないと主張していた。
映画のラストで暴動のきっかけになった事件のシーンがあるんだけど、はっきりと「この人が犯人でしたー」という表現はない。
わかるのは首の後ろのタトゥーと事件後に警察の制服を燃やしていること。
このことから作中で警察側が言っていた通り、今回の暴動は極右勢力によって仕組まれたもので、警察官の制服を着た極右勢力が事件を起こし動画撮影しSNSで拡散、その結果内戦が起こってしまったということになる。
ちなみにあの首の後ろのタトゥーはケルト十字架と呼ばれるマークで、ネオナチ主義者や白人至上主義者に使われている象徴だったりする。
こちらもおすすめ
ワンカットといえば「キャメラを止めるな!」もチープだけどおすすめ。
2017年に話題になった「カメラを止めるな!」のフランスリメイク版。